近況

大好きな男の人に大好きだと言われて、わたしとその人とは恋人どうしになった。ショッピングにでかけた。食事をした。手をつないだ。キスをたくさんした。わたしは処女でなくなった。あの人とこんなふうにできたらどんなに幸せだろうと思っていたことのすべてがそのまま叶ったのに、わたしはちっとも楽しくないしちっともうれしくなかった。どうしてかはわからない。「おれのことを好きだと言ってくれている女の子がふたりいるんだけど、そのどちらにも『いま自分には好きな子がいるから、会ったりすることはできない』ときちんと断っておいたよ」と伝えられて、どうしてそんなことをわたしに言うんだろうと思った。なんか気持ち悪いと思った。そんなことどうでもいいと思った。「大好きな男の人」は「大好きだと思いこんでいた男の人」だったんだろうか。恋と思いこみとは類似のものではなく同一のものだったんだろうか。それともなにかほかに理由があるんだろうか。どうしてかわからない。これが一時的な情緒の不安定ならいいと思う。そうでなかったらいよいよどうしていいかわからない。